韓国在住14年、Takeさんの韓国情報ブログのバックナンバーです。

Takeさんの韓国見聞録      2007.01.14発行  NO.61

<古くからの友人、韓国をよく理解するための日本人サラリーマン日記>

Takeさん@韓国ソウルです。

正月気分からもすっかり解放され、日本にいる皆様も忙しい毎日を過ごしていると思います。今年は韓国にとってどんな年になるのでしょうか?黄金の豚の如く経済的にも大きく飛躍できれば良いですよね。今年の暮れには5年に一度の大統領選挙が控えています。私が韓国で生活するようになったのは92年の暮れでしたが、その当時は金泳三(キムヨンサン)大統領の当選に国中が沸いていた時でした。あれから時が流れ4人目の大統領選挙の時期になったのかと思うと時間は確実に流れているのを感じます。政治の事はよくわかりませんが、今年の選挙はこれからの韓国にとって非常に重要な気がしてなりません。

まあ、私には永住権はあっても選挙権はないので傍観しているしかないのですが、いずれにしても有能な指導者が立って欲しいものです。

■本日のサラリーマン日記「清渓川で今年の大統領選挙を考える」

去年のクリスマスの夜に家族でソウル市庁前と清渓川(チョンゲチョン)のイルミネーションを観てきました。清渓川のイルミネーションは初めてだったのですが、その規模の大きさと美しさにしばらく時間の流れが止まったような気分になりました。冬の清渓川などは寒いだけで何の良いものがあるのか?とさほど期待もしていなかった私は本当に感動したのでした。

清渓川は既にご存知の方も多いと思いますが、ソウルの都心に復元された朝鮮王朝時代の清流です。全長5.8キロ、水深は平均40センチ、橋の数は22個でソウル中心部の光化門にある清渓広場から始まります。清渓川に関するガイドは巷に溢れているので、私は清渓川ができるまでの経緯を少し考えてみようと思います。

http://japanese.seoul.go.kr/chungaehome/seoul/main.htm

韓国に一度でも旅行に来られた方なら江南(カンナム)という言葉は何度か聞いた事があると思います。しかし、その反対の江北(カンボク)という言葉を知っている方は本当に少ないのではないでしょうか?読んで字のごとくソウル市を流れる漢江(ハンガン)を境にして、ソウル市庁を中心とした北側地域をを江北と呼び、南側の地域を江南と呼んでいます。

88年のソウルオリンピック以降、急激に開発が進んだ江南地域はまさしく急成長する韓国経済の象徴でもあり、地価高騰などの話題が尽きない地域でもあります。ソウル市民の意識の中にも江南派と江北派のようなものがあり、全羅道と慶尚道のような対立意識こそはありませんが、微妙な地域感情があるのは事実です。同じ若い子同士でもデートをする時など江南派と江北派に分かれるという話を以前に聞いた事があります。

本来、ソウルの中心は江北側にあり李朝時代の大宮や政府の行政機関や大使館なども江北に集中していいます。外国人が観光に来る場合も大半の時間はこちらで過ごす事が多いと思います。そのような韓国の中心地域でもあるに関わらず、ソウルオリンピックを前後にしてその主導権が江南側に流れて来た感があり、特に最近の地価高騰でもわかるように江南に住んでいるというだけで羨望の眼差しを受けるような、言わば勝ち組を象徴するようなイメージがあるのが江南なのです。

私のオフィスは2001年暮れまではソウル市庁の近くにあり、その後に今の江南新沙洞に引っ越してきた経緯があるので、両者の違いというか温度差がよくわかります。私の頭の中でも江北というと在来市場があり、道は分かり難くてゴチャゴチャした下町であるのに対し、江南は区画整理されてとても洗練されたビジネス街のイメージが強いです。

このような二極化現象を何とか食い止めて、江北の威信を復活させようと発案されたのが、清渓川の復元工事であると言っても過言ではないでしょう。この大胆なソウル市の改造に成功する事により、これまで江南ばかりに流れていた人と物の流れを変える効果はもちろん、ソウル市民の江北に対するイメージが大きく変化してきた事はとても意味が深いと思います。それはすなわち江南の地価高騰を抑制する効果もあるからです。

私はこの川の流れを見る度に、遥か遠い昔、李氏朝鮮時代の歴史を感じざるを得ません。韓服を着て偉そうにヒゲを伸ばしている当時の役人達が目に浮かんできます。そして、今までソウルの中心部にどんよりと溜まっていた雑気というか、膿のようなものが漢江に流れて行くような気がしてならないのです。

この清渓川の復元工事を推進したのは李明博(イ・ミョンバク)前ソウル市長である事はあまりにも有名です。彼は清渓川の復元をソウル市長選挙の公約にして当選しました。清渓川の復元には周辺地域の住民を始め、それに関係する20万人近くの人々を説得する必要がありました。工事が始まる前は誰もが不可能と思われた大工事を彼は先頭に立って陣頭指揮を執り、わずか2年4ヶ月程の短期間で工事を成功させてしまったのです。この清渓川の成功により彼は一躍、韓国の表舞台に出てきた感があります。

李明博の経歴を簡単にお話しますが、彼の生家は決して裕福なものでは無かったようです。働きながら大学を卒業して、36歳の若さにして現代建設の社長になった話は有名です。当時は中小企業くらいの規模しかなかった現代建設を韓国を代表する一流企業に押し上げた叩き上げの人物でもあるのです。そのような建設業界出身の政治家である彼のニックネームは「ブルドーザー」です。

このブルドーザー李明博氏が、今の大統領候補の中で一番人気を獲得しているのも何となく理解できるのです。清渓川の復元工事に見せたカリスマ的な指導力と実行力を今の韓国は強く望んでいるのではないでしょうか?来年の今頃には李明博氏が大統領になって、この清渓川を歩く事ができるのかは神様だけが知ってる事なのでしょう。

最後に私が清渓川に来ると必ずといって良いほど立ち寄る場所があるので紹介しておきます。清渓川に来るには地下鉄5号線の光化門駅を利用すると便利です。5番出口を出て少し歩くと清渓広場が見えてきます。そこから下流に歩き始めて5番目の橋である「3.1橋(サミルキョウ)」まで歩きます。その橋を目標に道路に上がるとコーヒービーンというコーヒーショップが目に入ります。今の時期のソウルは最高に寒いので3.1橋まで歩いて来る頃には、全身は冷え切っている事でしょう。そんな時に飲む熱いコーヒーは本当に美味しいですよ。このコーヒービーンの裏手にはたくさんの飲食店もあるので、ぜひ立ち寄ってみる事をお勧めします。

■編集後記

ここまで読んで下さり有難うございました。

今日は会社も休みだったので久しぶりに光化門の教保文庫に出かけました。帰りに美味いトンカツが食べたくなり、いつも行くムギョ洞のトンカツ屋に向かったのですが、既にそのお店は無くなって他のお店が入っていました。これでまたソウルの楽しみが一つ減ってしまったと肩を落としながらトボトボと清渓川を散歩して来た次第です。そこでは去年のクリスマスにあれ程、美しかったイルミネーションの解体作業が忙しく行われていたのでした。話によると今月の7日で終わってしまったとの事。来年はどんな素晴らしいイルミネーションを見れるのか、今から楽しみにしながら清渓川を後にしたのでした。

 

それでは皆さん、アンニョンヒケセヨ~!!