韓国在住14年、Takeさんの韓国情報ブログのバックナンバーです。

Takeさんの韓国見聞録      2006.09.23発行  NO.54

<古くからの友人、韓国をよく理解するための日本人サラリーマン日記>

Takeさん@韓国ソウルです。

日本の新しい首相が決まりましたね。会社や取引先では安部氏はどんな人物なのか?という質問をよく受けるようになりました。みんなが口を揃えて「阿部氏(アベシ)、阿部氏(アベシ)」と言うので、私は思わず「ヒデブ!!」と叫びたくなりました(最近の若い方はピンとこないかもしれませんネ?)

まあ、それは冗談として安部新首相の婦人が大の韓国ファンと言うことが、こちらのマスコミでも話題になっていて、日韓の関係改善に寄与してくれるのではないかとの期待が高まっています。

■本日のサラリーマン日記「韓国で働く 翻訳家 M氏の場合」

単なる旅行や留学だけで終わるのではなく「韓国で働いてみたい」という方が確実に増えているようです。その国をより深く理解する手段としては現地で働いてみるという事が、一番の近道ではないでしょうか?

先日、久しぶりに親友のM氏(在韓日本人男性)に会う機会がありました。彼とは仕事を通じて知り合いになったのですが、どこの会社にも所属すること無く一匹狼の翻訳家で頑張っています。そんなM氏に私の素直な質問を投げかけてみました。これから韓国で働いてみたいという方に少しでも参考になれば幸いです。

Q1.主な仕事内容を教えて下さい。

在宅で翻訳をしています。ごくたまに通訳の依頼も来ます。90%以上が韓日の翻訳及び監修で、たまに日韓の翻訳・監修もします。

Q2.今の仕事につくまでの経緯を教えて下さい。

最初は日本語を教えていたんですが、それを辞めた後で何をしようかということになり、とりあえず翻訳の資格を取ろうと高いお金を払ってあるところに加入しました。でも、そこは韓国人専用のところで、日本人は私一人で教材や試験なども全て韓国人対象でした。それで数ヶ月で辞めて履歴書をネットで10箇所くらい送りました。

最初は経験もなかったので反応はありませんでしたね。その後、ダウムのカフェに加入してそこから直接ビデオの日韓翻訳の仕事をゲットしました。料金は安かったのですが、あるテレビ会社からの依頼だったので、番組が流れた後に私の名前がテロップで流れました。

それが経験となって、経歴にも書いて履歴書を送ると、数箇所から連絡が来ました。そうして、翻訳会社が一社、二社と増えていきました。信頼を築くと翻訳会社が他の翻訳会社を紹介してくれたりもします。

インターネットで履歴書を送った翻訳会社はこれまで200件近くに上ると思います。ある翻訳会社の専属で翻訳をしても、毎日仕事が来るわけではありませんからいかに契約社を増やすかが問題です。

Q3.翻訳家として韓国語の実力はどれくらい必要ですか?

私も最初の頃は韓国語の実力が非常に重要だと思いましたが、実際にやってみて感じたことは、それ以上に日本語の実力が重要です。韓国語は基本的な文法、日常会話、などがある程度理解できればいいのではないでしょうか。というのは、韓日翻訳の場合、通訳と違って調べる時間があります。分からない言葉が出てきたらネットで検索したり、韓国人に聞いたりすることができます。また、翻訳ソフトを利用すれば80-90%の率で日本語に直してくれます。

でも、日本語の表現と言うのは自分が知っている範囲でからしか選べないのでいかに美しい日本語、自然な日本語に触れているかが重要です。私もそうですが、長年韓国に住んでいる人の悩みは、日本語が下手になってい

くことです。最近の言葉や、新語には本当に疎くなります。また、韓国の表現にどっぷりつかっていると韓国的な日本語を話している自分にビックリすることがありますし、他の日本人から注意されることもあります。

ですから極端な話、小説などの文学翻訳は別ですが、技術翻訳の場合は、翻訳機を利用すればほぼ意味の通る日本語になっているわけですから、それを「自然な分かりやすい日本語」に校正する技術の方が問われます。

もちろん、誤訳などを見つけるためには韓国語も知らなければなりませんが、専門的な言葉はやはり辞書や検索などでカバーできるので、韓国語の実力は思ったほど必要ないというのが今の実感です。

個人的には、

1)日本語の実力

2)スケジュールを組み、それをこなす判断力・体力、及び担当者と良い関係を築く社会性

3)コンピュータ活用能力

4)韓国語の実力

の順で必要になるのではないかと思います。(あくまでも個人的見解ですヨ)

Q4.今の仕事のやりがい、楽しみはどんな事ですか?

楽しみは、多くの人が会社に行く平日の朝やお昼に、サウナに行って誰もいない湯船にどっぷりとつかる事でしょうか?このように自分で時間を管理できることです。平日でも昼から映画に行ったり、山に行ったりもできます。

やりがいは、担当者やクライアントが喜んでくれたり、お得意さんができたりしたときに感じます。(実力を認めてくれたということですから)また、自分が翻訳した内容が本になったり、ホームページに掲載されたりするのを見ると嬉しいですね。

Q5.仕事をしながらイヤな事、辛いことは何でしょうか?

時間が自由と言うのは、ある面から見ると24時間営業ともいえます。すなわち日曜日などに出かけた時に携帯で急な仕事の依頼が来たりもします。一度なら大丈夫かもしれませんが、同じ会社からの依頼を二度、三度と断ると仕事が来なくなる場合があります。ですから私の場合はよほどの事情がない限り、来た依頼は断らないようにしています。

また、辛いことはやはりクライアントからのクレームですね。私のミスの場合もありますが、日本語を知らない韓国人が作業することによって文字化けしたり、あるいは少し日本語を知っている人からクレームが来る場合もあります。その度にいちいち説明したり、他の資料を提示しながら説得します。また、時には非常にきびしいクライアントで、何度も校正を要求されたりしたこともありました。

Q6.これから翻訳関係の仕事を希望する方に対して心構え、アドバイスがあれば何かお願いします。

前にも述べましたが、やはり日本語の実力、コンピュータ活用能力、社会人としての基本的なマナーや配慮・・・こういのが非常に重要です。

日本語の実力はあっても、コンピュータを知らないと、さまざまなクライアントの要望に答えられません。MSワードではなく、アレアハングル、エクセル、パワーポイントなどのファイルで依頼が来ることもあれば、ファクスや画像データで来たりもします。その場合も、コンピュータを駆使してOCRでデータに直して、それを翻訳機で翻訳して・・・というように作業すれば、効率がまったく違います。

また、やはり仕事は人間関係なので、担当者といかに良い関係を築くかも重要です。メールのやり取りにおける小さな配慮や言葉遣い、電話での応対、締め切りの遵守などなど、結構そういう面においても担当者はよく見ています。

Q7.これからの夢や展望があれば教えて下さい。

最近はインターネットで簡単に個人でも情報発信ができます。インターネットを通じて、日本人には韓国のことを、韓国人には日本の知りたいことなどを紹介できるサービスなどが作れたらいいですね。

あと、翻訳者として自分の名前が掲載された本などが書店に並んでいたら良いなと思います。

以上。

私が話を聞いていて興味深く思ったのは、韓日翻訳に必要なものは韓国語の実力よりも日本語能力という点です。私もこの点はとても実感できるし、韓国で働く上で意外と盲点になりやすい点です。翻訳業に関係なく韓国社会で働く場合、我々に要求される事は読みやすくて綺麗な日本語を書いて欲しいという事なのです。正しい日本語を書くことができない若者が増えているというニュースをたまに目にすることがありますが、韓国で仕事をする上でとても大切な事だと思います(まあ、私も誤字脱字が多いので人の事は言えませんが、、)

M氏のように組織や時間に縛られない生き方は、私のようなサラリーマンにとっては本当に羨ましい限りですが、家族を養えるくらいに収入を得る事は並大抵の努力ではありません。翻訳そのものよりも仕事を獲得するために、最低限の韓国語の実力が必要である事も忘れないで下さい。

私が始めて韓国に来た頃は、日本語の看板の誤字脱字が目立ちましたが、最近は本当に改善されてきました。M氏のような日本人が頑張ってくれているおかげかと思っています。

■編集後記

ここまで読んで下さり有難うございました。

「暑さ寒さも彼岸まで」という諺がありますが、昔の人は本当によく的を得た表現をするものです。韓国は気象の変化が極端なので、日本以上にこの諺がピッタリきますね。

韓国のカレンダーを持っている方はわかると思いますが、今年の「秋夕(チュソク)」は10月6日です。また10月2日と4日を除くと一週間丸ごと休める事になり、我々、在韓メンバーにとっては日本のゴールデンウイークに対する「恨(ハン)」を晴らす一週間になりそうです。こんなに休みが連続するのは近年無かったような気がします。会社の若い連中の中には海外旅行の計画を立てている方もいます。韓国の主要な観光地は問題ないと思いますが、この次期に日本から来る方は注意しておいた方が良いかもしれません。

それでは皆さん、アンニョンヒケセヨ~!!

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