韓国在住14年、Takeさんの韓国情報ブログのバックナンバーです。

Takeさんの韓国見聞録      2007.04.22発行  NO.66

<古くからの友人、韓国をよく理解するための日本人サラリーマン日記>

Takeさん@韓国ソウルです。

アメリカで悲しい事件が起きてしまいました。銃乱射事件で33人の犠牲者を出したこの事件は、その犯人が在米韓国人と言うことで、最近のニュースはこの話題で持ちきりです。どの国よりもプライドや自尊心が高い韓国人にとっては、今回の事件は世界に韓国の汚名を流すことになり、何とも耐え難い屈辱として感じる方も多いようです。私が驚くのは色々な場所で追悼の行事が行われ、まるで自分の息子が犯した罪を償うかのような雰囲気である事です。個人主義の風潮が強くなったと言われながらも、日本に比べるとはるかに同族意識が強く、他人の事のように見過ごす事ができないのが、この国の人情なのだと改めて痛感しました。

■本日のサラリーマン日記「京義線は男のロマン」

京義(キョンウィ)線は朝鮮半島を南北に縦断する鉄道です。その昔ソウルを起点にして北朝鮮の平壌を通過し、新義州まで達する総全長499kmの鉄道でありました。1905年に日本が大陸侵略を目的に付設したもので、当時は新義州から鴨緑江鉄橋を渡って中国にも行く事ができたわけであります。旧日本軍が朝鮮半島から満州まで進出していく大きな足がかりとなった重要な路線であり、1953年に朝鮮戦争の休戦協定が結ばれるまでは、ソウルと平壌を結ぶ大動脈でありましたが、南北の分断以降、その存在は時代の流れと共に人々の記憶から薄くなってしまいました。

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今はソウル駅を起点にして二村(イーチョン)、一山(イルサン)、臨津江(イムジンガン)駅と続き、2002年に延長された都羅山(トラサン)駅を終着点とする全長約50km程の短い路線になっています。単線であるがゆえに朝夕のラッシュ時でも1時間に数本が限度で、ソウル市内を走る地下鉄のような活気を感じる事はできません。

実は私は二年前まで一山新都市という所に住んでいたのですが、広大な新都市の中で京義線一山駅近くのアパートを選んだわけです。高層アパートのベランダからは京義線の列車が走っている風景が見えるわけですが、私はなぜかその景色が気に入って、その場所に住む事を決めたのでありました。当時は勤務先のオフィスがソウル支庁近くにあった事から、毎朝、京義線のお世話になったのですが、先ほども話したように本数が少なくて、のんびり走るそのスタイルに何故だかとても癒された事を覚えています。

単線であるが故に本数に限りがあり、現役を引退したような古びた列車が走る事もある路線ですが、一山駅の高架橋から北側を眺めるとあの線路の向こうに北朝鮮があり、遠く中国やロシヤの大陸と地続きであると思うと「男のロマンを感じる、、、」と言ってもまんざら大げさでない事も事実です。四方を海に囲まれた島国である日本では到底ありえない光景がそこに存在しているわけです。

ソウル駅を出発して2時間も乗れば都羅山駅に辿り着く事ができるわけですが、そこはもう38度線の国境地帯が待ち受けています。普通、38度線と言えば板門店を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、私はこの列車に乗って都羅山駅まで行ってみる事をお薦めしたいです。とは言っても都羅山駅は特別な観光地でもないので、お洒落なカフェやお土産屋さんがあるわけではないのですが、半世紀程前まではこの先まで列車が走っていたと思うと何とも言えない思いわが沸いてきます。

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私が最後に都羅山駅に行ったのは今から数年前の事ですが、失郷民と呼ばれる北朝鮮に故郷を持つ方々が、都羅山駅の最先端で遠くを見つめている、その姿を忘れる事ができません。あるお爺さんはトランペットを持参して、北の親族にも聞いてもらいたいと力を込めて演奏している光景も印象的でありました。

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このような姿を見ていると民族分断の悲哀とでも言うべきでしょうか、平和な環境が当たり前になってしまった我々、日本人にはとうてい理解できない部分でもあり、「韓民族の恨」という一言では片付けられないものを実感できる場所でもあると思うのです。

この京義線を北朝鮮の首都である平壌まで延長する事を、韓国側は何度も提案していますが、北朝鮮側のガードは固く再三にわたりドタキャンされている事は有名です。私が思うにこの京義線の延長工事が完了してソウル駅から平壌まで開通すれば、事実上の南北統一は成されたと同じ事なので、話は簡単ではないのでしょう。

この都羅山駅に行くには少し注意が必要で、ソウル駅から出発して臨津江駅で一度、下車しなければなりません。そこで外国人の場合はパスポート等の身分証明書を提示してから、都羅山駅行きの切符を買って再び列車に乗る必要があります。臨津江駅辺りから武装した兵隊の数も多く見られるようになり、否が応でも緊張感が増してきます。

臨津江駅から都羅山駅まで行ける列車は一日に数本しかないので、下記の時刻表をよく確認してから行って下さい。ソウル駅から都羅山駅までの料金は片道1500ウォンで、月曜日と日曜を除く公休日は臨津江止まりで都羅山駅までは行きませんのでくれぐれも注意が必要です。

http://www.pajuro.net/open_content/economics/traffic/traffic_help/traffic_help_01_00_01.cms

臨津江駅の周辺は以前に比べてかなり整備が進み、特に臨津江公園は最北端の国境地帯と言う事で、「南北統一」「別離再会」「戦死者への鎮魂」「望郷」等のモニュメントが多く掲げられて、民族の統一への思いが伝わってきます。今の時期は藤の花や躑躅(つつじ)満開でとても美しいです。都羅山駅から帰る時には、直ぐにソウル行きの列車に乗り込まないで、この臨津江公園にも足を運んでみて下さい。

話は少しそれますが、韓国の列車に乗った方はわかると思いますが、線路までの高さが、子供でも降りる事ができるくらい低いのがその特徴でもあります。私はそれがとても気に入っていて、いつもの事ですが必ず線路に降りてしまいます。その昔、銀河鉄道999というアニメが大ヒットしましたが、朝一番でソウル駅のプラットホームに立っていると遠くからメーテルでも現れてくるような錯覚に襲われるのは私だけでしょうか?

韓国に来られたなら鉄道の旅もぜひ挑戦して欲しいのですが、遠くまで行くことが難しい場合は、ぜひこの京義線の旅をお薦めしたいです。1日もあれば十分に都羅山駅から帰ってこれるので安心して出かける事ができます。ソウル市内の密集した住宅郡から超高層アパートを経て、何も無い田舎の原野を走る京義線は今の韓国の発展ぶりを目の当りに見る事ができる路線かもしれません。

私はこの京義線に乗っていると、なぜか湘南の江ノ電を思い出してしまうのですが、実は2008年末には複線化工事が完了してしまう予定で、今のようなのんびりとした走りはもう味わえなくなってしまうと思われます。また、ひとつ時代の波に飲み込まれる運命にある京義線ですが、今までのソウル観光に飽きた方にはぜひお薦めの観光コースです。心地よい春風を体いっぱいに受けながら、ノンビリと汽車に揺られて旅をするのもまた良いものかと思います。

■編集後記

ここまで読んで下さり有難うございました。

東京の桜は既に散ってしまったと思いますが、皆さんは今年の花見はどこに行かれましたでしょうか?私は仕事の方が忙しくて遠出ができず、結局、近場のヨイド桜祭りを楽しんできました。自宅から自転車で20分ほど走ればヨイドまで行けるので、便利と言えば便利なのですが、今年は別の場所に行きたかった事も正直な気持ちです。デジカメに動画を収めたので公開します。自転車に乗りながら撮影したのと、デジカメ動画ということで画質はイマイチですが、雰囲気はわかると思います。

http://videocast.yahoo.co.jp/video/detail/?vid=288230376151719496

http://videocast.yahoo.co.jp/video/detail/?vid=288230376151718904

今年はケナリの方が先に散ってしまい、いつもより少し寂しい桜祭りとなりました。

それでは皆さん、アンニョンヒケセヨ~!!